ではここで、適切な仮説の立て方を整理しましょう。
適切な仮説は次の3つの特性を有しています。
- 検証可能性
- 判定可能性
- 反証可能性
つまり適切な仮説であるかどうかを評価するには次の3点を満たしているかを考える必要があります。
- その仮説は検証可能か
- その仮説は判定可能か
- その仮説は反証可能か
これらの評価は、次のように言い換えることができます。
- その仮説は現実的に検証できる説であるか?あるなら、どのように検証するのか?
- その仮説を判定するための明確な基準を設定することができるか?
- その仮説は再現性のある事象、すなわち事実に基づいて検証されているか?
上記を満たしていれば、適切な仮説として具体的なアクションを起こすことができるでしょう。
補足: ニュースで話題になった事象を適切な仮説の立て方に基づいて検討する
事例1: 東芝の不正会計問題
現在経営再建中の東芝は多額の負債と2200億円もの債務超過により、実質的に経営が破綻しています。さらに16年12月決算では第三者機関である監査法人Pwcあらたから監査証明を得ることが出来ませんでした。
この事件の背後には東芝の上位下達の文化があるのではないかと言われています。
上位下達とは上の指示を下に伝えて達成するという、いわゆるトップダウンのことです。
この仕組み自体は組織体制によって当たり前のことですが、行き過ぎれば上記のような結果になってしまいます。
私はこの結果はハロー効果に基づく、事実と異なる仮説と誤った判定によって生まれたものだと考えています。
つまり経営陣のハロー効果によって、立場が下の者が経営陣に都合のいい結果を生み出すために、不適切な行為を行い、その結果、誤った結果に陥ったと推察します。
これは反証可能性の欠落です。
事例2: STAP細胞の存在の是非
「STAP細胞は本当にあるのか」こんな見出しが新聞や週刊誌にとりだたされたのは2014年7月のことです。
この議論は元々はこんな議論ではありませんでした。
元々の問題は「STAP細胞の作り方を発見したが、他の人が同じようにやってもSTAP細胞を作成できなかった」という再現性の問題でした。
簡単にいうなら、レシピ通りに作ったのに、思った通りにならなかったということです。
それが巡り巡って、STAP細胞はあるのか、ないのかという議論に論点が変わってしまったのです。
このように説明しても、「再現性がないということはSTAP細胞は存在しないということじゃないか」と言う人がいますが、それは論理的に間違っています。
再現性がないからといって、STAP細胞は存在しないとは言えません。
この事件から言えるのはSTAP細胞があるかないかはわからないが、少なくとも小保方さんの論文のやり方では作れなかったという事実だけです。
別のやり方なら作れるかもしれませんし、論文に何かが抜けているのかもしれません。
これは検証不足と論点のすり替えです。そして論点のすり替わった原因には世論というハロー効果があります。
世論は再現性の意味などよくわかりません。知りたいのはSTAP細胞というものが本当にあるのか、それだけです。
しかし判定可能性の項で説明したように、一般的に真であると判定することは、偽であるというよりも難しいのです。
ですから、STAP細胞があるかという議論は判定可能性が欠落しているのです。
まとめ
このように適切な仮説の立て方が、一般的諸問題にも応用可能であることがわかりました。
問題の原因には実証サイクルの中にある可能性もあります。
以上のことを踏まえて、様々な場面で適切な仮説の立て方を参考にしてください。
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